先日三重に出張した際に、工場近くに湧き水が出る事を初めて知って、出かけてみた。
工場を出て小道の坂を500m下ると、それは突如現れた。
工場から崖は見えたが、その下に廃墟となった石灰工場があるとは知らなかった。
鬱蒼とした茂みと赤錆に包まれた工場は不気味な雰囲気を醸し出していた。
この古い石灰工場は昭和40年代には150名が働いていて、平成になって閉山となったらしい。
約20年で遺跡のような廃墟となった。
廃墟の先には風穴や鍾乳洞があるらしいが、現在は一般に公開されていない。
側には川が流れ、この源流の湧水を対岸の道端まで引いていた。
この湧水を住民が途切れることなく汲みにやってくる。
最近がけ崩れがあったようで、水汲み場の100m手前で立ち入り禁止
となっていたが、みんなお構いなしにやってくる。
ネクタイ姿の見慣れない自分を見て、住民はいろいろ話しかけてきた。
「水汲み場まで車を入れさせてくれ」
「工事はいつやるのか」「いつから立ち入り禁止になったのか」などなど
「あのぉ、私は役所の人じゃなくて、すぐそこの会社の従業員で
出張で初めてここに来た、いわゆる観光客です」
と、少々照れ笑いしながら話すと、この地域の歴史について、年配の男性は熱く語り始めた。
今回の出張は台風の影響で早めに帰宅したが、
この地域がますます好きになれた出張となった。